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東亜商事|Passion Cellar : 葡萄の大地から

シャンパーニュ訪問記

2009.04.30

シャンパーニュ・マゼンタを訪ねて





 パリから東へ80キロ、エペルネは中心部だけなら15分もあれば一回りできてしまう、こじんまりとして眠っているような街ですが、じつは街の地下には膨大な財宝が眠っているんです。
 その財宝とは、ずばりシャンパン。
 エペルネには数多くのシャンパンのグランメゾンが館を構えていますが、地上にある館の優雅さはすべて、この地下のお宝が生み出したものなのです。
 ご存知のように、シャンパンは壜内2次発酵をしたあと、最低でも15ヶ月寝かせることが法律で定められています。高級なプレステージシャンパンになれば、3年から5年は当たり前。つまり、どのメゾンも大量のボトルを寝かせて保存しておく必要があるからで、その保管場所が地下のトンネルというわけです。
 その総延長はいったい何十キロになるのやら。なにせ、第2次世界大戦中、ヒトラーは戦意高揚のためにシャンパンを供出することを命じますが、地下のトンネルは迷路のように入り組んでおり、隠すのが容易で数多くのシャンパーニュが難を免れたとか、爆撃を避けるため学校や工場としても使われていたという話も残っているほどです。
 そして、いま現在、熟成しているシャンパンのボトルは一体何億本になることやら・・・。 地下のカーブこそがシャンパンのおいしさを引き出しているわけで、まさに、これがシャンパーニュの"底力"ではないでしょうか。








 さてさて、そんなエペルネの街に、シャンパーニュ・マゼンタを訪れました。街の東の小高い丘になったところに工場と館を構えています。




 創業は1925年、現当主の祖父ロベール・アンドリューがエペルネ近郊のマゼンタ村で始めたもので、35年に現在の場所に移りました。
 3代目にあたるオーナーのティエリー・ロンバールさんが1980年から家業を受け継ぎ、規模を拡大し、87年には5000平方メートルの工場を建設、現在は年間15万ケースの生産量を誇っています。

 さっそく、ロンバール社長に工場とカーブを案内していただく。

 タンクは、ステンレスキューブが中心で、品種、地区ごとに分類。ロンバール社は自社畑も所有し、約50の生産農家とも契約しており、シャンパーニュの全域からブドウが集まっています。なかで、目に付いたのが、3つの大きな樽。通常目にする樽よりずっと大きいのです。樽のはサイズも呼び名も地域ごとに異なりますが、シャンパーニュのこれはMuidミュイと呼ばれるもので、600リットルだそうです。なかで熟成されているのは、やはりグランクリュのもの。ちょうど2008年の収穫したものがワインとなってできあがっている時期でしたので、幸運なことに樽から直接テイスティングさせてもらえました。

 まずは、コート・ド・ブラン地区のGrand Cru 、Menil のシャルドネ。グレープフルーツやレモンの果実味に十分に熟成した凝縮感があり、酸もしっかりとあり、きりっと引き締まっています。通常、この段階で味わってもそれほどおいしいものではないのだけれど、ただの白ワインとしてもすでに十分においしい。さすが、メニル、です。

 次は、モンターニュ・ド・ランス地区のGrand Cru でBouzyのピノノワール。フランボワーズやカシスの赤い果実の香りが華やかで、ボディがしっかりとして、こちらも酸とのバランスがとてもよくまとまっている。3つめはピノ・ムニエでランスの西にあるPargnyのものでした。




 ロンバート社長曰く、2008年というのは、6月には雨が降ったが、9月の収穫時は好天で、日中は暑いくらいだが夜は冷え込み、ぶどうにとっては最適のコンディション。シャンパーニュ地方では2002年以来、久しぶりに最高のミレジムになるだろうということです。ミレジムのリリースまでには、数年待たないといけませんが、いまから楽しみです。



 そして、いよいよ地下を掘り抜いたカーブへ。なんと、地下2階の構成になっており、全長は1キロ以上あり、もともとこの場所に100年以上前から掘られてあったものだそうです。年間を通して一定の温度と高い湿度が保たれていて、これがシャンパーニュ独特の風味を生み出す秘密でもあるのですが、無数のボトルがびっしりと並ぶさまは何度見てもほんとうに壮観です。










再び地上に戻ると、びんの口元を凍らせて澱を取り除くデゴルジュマンからコルク栓をしてエチケットを貼り、商品が完成するまでのラインが、すべて自社で完結しており、コンパクトだけれど効率よくまとまっていて、清潔な現場でした。

 最後に、テイスティング、フランス語だとデギュスタシオンをさせていただきました。 マゼンタ・ブリュット Magenta Brutは、泡がきめ細かく、口当たりがやさしい。香りは柑橘系のさわやかさとピノノワールからくる赤い果実の華やかさがある。味わいにも品のよい酸と果実の甘みがふんわりと感じられ、アペリティフにぴったりというスタイルです。



Millesime ミレジム2002は、ビン内2時発酵後5年間もの長期に渡り熟成させるプレステージシャンパンで、ちょうど今年2009年に市場に登場できることになっています。 ロンバール社長曰く、2002年はシャンパーニュではすばらしい出来の年で、ふくいくとしたボディと酸のバランス(エキリブレといいますが、ワイン造りではたいへん重要な要素なんです)がよく、料理には魚のクリームソースのようなしっかりしたものにも合うとのこと。



 総じて、主張が激しい押し付けがましいスタイルではなく、エレガントで控えめなセンスのよさが光る、といった印象。当主のロンバール社長もスマートでダンディな方で、この印象にぴったりの方だった。

 冒頭の写真でロンバール氏が手にしているのは、1924年のミレジムが入ったシャンパーニュ・マゼンタのボトル。祖父が初めて作ったメゾン第一号のボトルであり、ロンバール社の歴史を物語る大切な1本です。

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